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「……本当に、なんでも届けられるのかな?」
つまる息で呟いた言葉に、車掌さんが丸い顔を上げて私を見た。
うまく呼吸できない私の代わりに、春風の花びらが息をするかのように、指先が増々くすぐったくなる。
「車掌さん……私ね、ずっとあそこで眠ってたんだ」
近づいていく――市民病院と書かれた看板。
「頑張ってっていろんな人に励まされて。同じ数だけお花も、起きたら食べようねってお菓子も、人形も貰って。もうそんな歳じゃないのにね……。でも、沢山もらったの。食べれなくても、人形で遊べなくても、私は特別なものを沢山貰ったの。……それでも嬉しかったなぁ」
指先がくすぐったい。
そこから感覚が広がって、身体中がそわそわする。
「……私は結局、起きれなかった。けど、いまのこれは夢じゃないってわかってる。ねえ? 車掌さん……私もお返し届けられると思う?」
尋ねれば、車掌さんは短く鳴いて返事をした。
それに私は気がよくなって、頷き返した。
違う。もしかしたら季節の変わり目のせいで、気がおかしくなっただけかもしれないけど。
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