1人が本棚に入れています
本棚に追加
微かに聞こえてくる
流れるような 旋律
どこから....?
あたしは行くはずだった温室を通り過ぎ、路線変更する。
長く続く廊下を歩く内に、段々届く音がはっきりと鮮やかになっていく。
ポロン...... ポロン....
少しずつ鼓動が 速くなるのを感じる。
いつもの学校の廊下が、何故か知らない場所みたいで
いつもよりも 長く感じた。
「ここ.........」
音の鳴る方へ 鳴る方へ
辿り着いた先は 音楽室だった。
1年の頃に 2回だけ入った事はあったけど
何も無い 放課後に尋ねるのは
初めてで
「...............」
そっと ドアに耳を当ててみると
確かに 誰かがピアノを弾いている。
~~~~~♪.........
ゆっくりと 音を立てないように
ほんの少し
「お邪魔しま~す...」
顔が半分 見えるか見えないかの隙間
あたしの目と耳に飛び込んできたのは
「……!」
春の光に包まれて
人形のように 美しい
髪をなびかせながら
ピアノを弾いていたのは、鮮明に記憶に残っている
隣の席の 男の子だった
揺れる髪が 細める瞳が
踊る肩が 流れる指が
身体の全部が 艶やかに
音を奏でてる
覗き込んだあたしの視線は
まるで吸い込まれるように
日向理久から 逸らせない
「綺麗.........」
思わず 零れた言葉。
ハッと両手で口を隠したが、途端に音が鳴り止んだ。
最初のコメントを投稿しよう!