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「ねぇ、あれが噂のマドンナじゃない?」
ヒソヒソ
聞こえた瞬間、反射的にカバンの中から大好きな少女漫画を取り出し、顔を隠す。
うへぇ~~またやってしまった..........。
チラリと本の影から目を出すと、2人は興味が移ったのか前を向いて別の話をし始めていた。
女の子とは仲良くしたいと思ってるのに。
いつもそうだ。
悪口を言われてるような気がして、
頭の先から足のつま先まで
まるであたしを全部
品定めされてるような気がして、
他人と 瞳を合わせるのが
いつから怖くなったんだろう。
.......
『多貴』
『多貴』
本当の妹みたいに可愛がってくれて
にっこりと微笑みかけてくれた
お兄ちゃんの笑顔は まるで
ぽかぽか 陽だまりみたいで
名前を呼ばれると 嬉しくて
側に居ると 安心して
あったかい お兄ちゃんの眼差し
は
あれ?
漫画の主人公のみなみちゃんが
何故か 逆立ちしている。
アホでしょ!
あたし真性のアホでしょあたし!
慌てて漫画を回転させる。
あからさますぎたか・・反対向きで漫画読むやつなんて居ないよ・・
バレてなかったことを祈ろう!!
それよりも 何か
懐かしいことを 思い出してた気がする。
何だっけ、思い出せない。
窓を見ると、桜がゆらゆら揺れていた。
昨日までは 咲いてなかったはず。
一夜で咲いて、きっとまた一夜で散るんだろうな。
水色の 澄んだ青空と
ピンクの 花嫁は
寄り添うようで 溶けこむようです
あ、何か光源氏とか出てきそう。
ここは平安時代末期の都で、数々の女官を喰い荒らす光源氏を見かねた神が怒り、魔法をかけて豚の姿にするの。
こんな醜い姿となっては、もう人を愛することもできない、およよ。
ドサッ
いつもの癖に浸っていると不意に
隣の席に カバンが置かれる音がした。
気付いた瞬間、ドッと汗が出る。
そういえば そういえば隣は確か
男の子だった気がする。
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