第1小節

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「ねぇ、あれが噂のマドンナじゃない?」 ヒソヒソ 聞こえた瞬間、反射的にカバンの中から大好きな少女漫画を取り出し、顔を隠す。 うへぇ~~またやってしまった..........。 チラリと本の影から目を出すと、2人は興味が移ったのか前を向いて別の話をし始めていた。 女の子とは仲良くしたいと思ってるのに。 いつもそうだ。 悪口を言われてるような気がして、 頭の先から足のつま先まで まるであたしを全部 品定めされてるような気がして、 他人と 瞳を合わせるのが いつから怖くなったんだろう。 ....... 『多貴』 『多貴』 本当の妹みたいに可愛がってくれて にっこりと微笑みかけてくれた お兄ちゃんの笑顔は まるで ぽかぽか 陽だまりみたいで 名前を呼ばれると 嬉しくて 側に居ると 安心して あったかい お兄ちゃんの眼差し は あれ? 漫画の主人公のみなみちゃんが 何故か 逆立ちしている。 アホでしょ! あたし真性のアホでしょあたし! 慌てて漫画を回転させる。 あからさますぎたか・・反対向きで漫画読むやつなんて居ないよ・・ バレてなかったことを祈ろう!! それよりも 何か 懐かしいことを 思い出してた気がする。 何だっけ、思い出せない。 窓を見ると、桜がゆらゆら揺れていた。 昨日までは 咲いてなかったはず。 一夜で咲いて、きっとまた一夜で散るんだろうな。 水色の 澄んだ青空と ピンクの 花嫁は 寄り添うようで 溶けこむようです あ、何か光源氏とか出てきそう。 ここは平安時代末期の都で、数々の女官を喰い荒らす光源氏を見かねた神が怒り、魔法をかけて豚の姿にするの。 こんな醜い姿となっては、もう人を愛することもできない、およよ。 ドサッ いつもの癖に浸っていると不意に 隣の席に カバンが置かれる音がした。 気付いた瞬間、ドッと汗が出る。 そういえば そういえば隣は確か 男の子だった気がする。
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