第1小節

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久しぶりにかっこいいなぁって 思える男の子が 見つかって ちょっと舞い上がってた そう あたしにはやっぱり 恋するなんて 早いわ 「え、多貴ちゃんフォーリンラブしたんじゃないの?」 「唯、その事はもう0.5秒で脳みそから消していいよ。いくら美少年だからって、結局中身ってそんなもん。完璧な男の子なんていないんだよね」 完食した天ぷら蕎麦の器をトレーに返すと、そそくさと食堂を後にする。 「ちょ、ちょっと待って多貴ちゃん~どういうことなの??」 「あ、唯、つい話しこんじゃったけど時間大丈夫なの?」 空き教室から見える時計はもう1時30分を指していた。 廊下は人気が無く、帰宅部の子らはもうほとんど帰っていた。 「あっ!ほんとだ!!1時から部活あるんだった......じゃあ、明日ね多貴ちゃん」 パタパタと廊下を走って行く後ろ姿を見送ると、あたしはため息をついた。 「.......よし。帰ろ」 やめだやめやめ! 新学期に入って 何か新しいことが 始まるんじゃないかって 初めから 期待なんかしてなかった やっぱり香辛料なんかじゃない ただの女たらしで自分に酔ってる野菜に過ぎないんだから!!! 靴箱の前まで来て、ハッとする。 まだバスの時間 来ないんだった。 実家が遠くて、 登下校はバスしか手段が無い。 仕方ない。待つか。 回れ右をして今来た道を引き返す。 って言っても校内で暇潰しできる所なんて無いんだけどなあ...。 アーーーーーーーヒマだーーー。 温室にでも行こうかしら。 ピカ高には 大きな温室がある。 華道部に使う花と、生物園芸部の研究素材としてたくさんの花や植物が植えられている。 少し錆びついてるけど、いい匂いがして、一面ガラス張りの壁いっぱいにお日様の光が差しこむ。 お昼寝するには 最適な場所。 あたしの大好きな 場所。 ~~~♪............. 温室に行く道の途中 耳に メロディーが届いた。
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