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最近、家庭教師のバイトを始めた。
最初に受け持ったのは高校受験を控えた女の子で、第一印象は素朴で純粋という感じだった。
最初は緊張してたみたいだが、少し集中力が欠けやすくなるところや、
褒めると目を合わさずに小さく頷くというかわいい仕草があったり、
短期間で見えてくる彼女の性格を見つけるのが楽しみの一つになっていた。
「今度のテストの範囲メモってきました。」
「ありがとう。今回は意外と範囲広めなんでしょ?」
「そうなんだけど、多分今回は大丈夫。」
「お、いいね。授業ちゃんと聞けてたんだな、偉いな。」
「授業はいつもちゃんと聞いてます!いや、そうじゃなくて、
橘先生が来てくれるようになってから、お母さん機嫌良いし、
少しテスト悪くても大丈夫な気がする。」
「それはどうかな。お母さんは全部お見通しなところあるかもよ。」
少し不機嫌な顔をした彼女のことを、俺は見えていない振りをした。
「先生って、彼女いるんですか?」
この手の質問に、俺は答えるべきか否か。
“恋愛は勉強の妨げになるからやめなさい。”
なんて時代はもう昔話なのでしょうか。
「どうかな。」
俺はこの四文字で切り上げようとした。
思春期の好奇心なんて、沸騰したらすぐに冷めるものだ。
こちらが波に乗らなければ、察知して身を引くような、
そんな奥ゆかしさを持った大人の女になるんだよ、小さな乙女よ。
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