愛情の裏側

23/23
398人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
「ホントに葵は泣き虫だね。 だけどそういう君も 僕は本当に好きだったよ」 過去形で伝えた思いで 彼女を解放して あげられただろうか。 身体で縛り付けて来た 歪んだ俺を彼女の中から 消してあげれるだろうか。 何か言いかけた彼女の唇を 指先で塞いで俺はその言葉を 静かに落とした。 「桐生君を信じて支えてあげて」 それでも俺は最後まで 君を守りぬくから。 ゆっくりと閉じた エレベーターの扉が 俺と葵を遮断した。 その瞬間、膝から力が抜け ズルズルと箱の中で 崩れ落ちる。 悔しさと虚しさが 俺の全てを蝕んで行くのを 感じながら拳を握りしめた。 …葵… 君を…愛している…。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!