第五章【特訓】

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「んートトの理想像ってある?」 「理想…像、ですか…?」 「うん」 「…えと、その…僕…」 ポッ、と染まる?。 チラチラとこちらを伺う視線。 「何だ?言ってみろよ」 「あ、あの、…その、僕なんかがおこがましっで、でも、僕…僕、サシャ様みたいに…なり、たい…っ」 「んー、…俺か」 「はい…っ」 少しの不安と期待を込めた目で見つめられる。 そんな目で見られてもな。 トトじゃなー うん。 「無理だな」 断言できる。 トトじゃ無理。 「……、です、よね…僕……すまませ、っん…」 地面にのめり込みそうな程沈むトト。 俺まで沈みそうだよ。 凄い負のオーラ。 「あー出来るっちゃ出来るぞ?死ぬと思うけど」 「ど、どゆ…」 「俺さ、ここまでなるのに何回か死んでんだよね。比喩とかじゃなくて」 「…へ?」 ポッかーん。 何言ってるか分からない、そんな顔で見られる。 トトにそんな顔されるとか心外だわ。 「完全結合治体って知ってるか?」 「かんぜん、けつごうちた、い…?」 ざっくり説明すると、トトがパァァアと明るくなった。 心なしかっていうか目が嫌なくらいキラキラ輝いてる。 「凄い、です!皆んなの怪我を、治してあげられる、…凄いです!!」 「はは、…」 トトは純粋だよな。 皆んなの怪我を治してあげられる、ね。 確かにそうだけどさ。 「…分からない?」 「…?」 「痛いんだよ。当たり前じゃん、体切られるんだから」 「あ…」 サーッと蒼白くなっていく肌。 気付いた? 「誰かの傷を治すって事はな、俺が傷付くって事なんだよ。傷は残らないけど」 「あ、ぁ、…、…」 視線をウロウロと彷徨わせるトトに、フッと笑いかける。 「なーんてな。大丈夫だ、もう慣れたから」 「そう、なんです…か?」 「ああ。だから安心しろよ」 「?」 「俺になりたいんだろ?…死にかけても俺が治してやるからさ」 「…ひっ、」 フルフル震えるトト。 俺は少し微笑んだ。 「ちょっと、馬小屋行ってくるわ。それまでにトトは腹筋30回な」 「へぇ?!さんじゅ、ですか!」 「おーがんばれよー」 トトの情けない悲鳴を背に、俺は扉を閉めた。
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