ニライカナイ

2/2
前へ
/10ページ
次へ
黒々と続く岩道の先に 空より澄んだ碧い海 倒れた十字の標べを横目に 愈々、下足は砂に濡れ ワタシの音は呑まれていった ポッツリ、此岸の縁へ立ち ほうっと一つ息をつく 杳々静かを湛える彼方には ニライカナイの地があった あすこでは金色の靄が やさしく豊かを撫ぜていて 御霊が風のように舞うのだろう あすこでは清いも穢いも 生きるも死ぬも一客の 器にたゆたって居るのだろう あすこでは あすこでは あぁ あぁやって来る ニライカナイに吹いた風が 春を連れて海を渡る もうすぐ もうすぐ春になるんだね 無垢たちが遊んで踊って あたり一面、春になるんだね あぁ 彼岸の縁に立つ眼
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加