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無垢の花を謡わせる一面の桜を夢に見た
運ぶ足のまま喜んだ一面の桜を夢に見た
口から口へと言葉が巡り
顔から顔へと笑みが移る
見渡す限り春の宴
水道管がゴボゴボ鳴った
雨に散った花びらが
道の上に積もっている
あんぐりと口を開け
累々と骸達
黒い蜘蛛が這っていく
曇天の下にそびえ立ち
乾いた咳を重ねた
暴かれた嘘のように
名前を失くし
老いてしまった何かになって
無垢の花を謡わせて咲く一面の桜を夢に見た
運ぶ足のまま喜んだ一面の桜を夢に見た
辺り一面、春だ、春
頭山の桜が満開だ
眩むほどの桜と饗宴
右へ傾き左に傾げ
破顔と乱痴気振り乱し
大笑、手拍子、足拍子
さぁさ飲めや騒げや
春が暮れて沈むまで
宴が尽きて尽きるまで
青天井を仰ぐ死人達
その目の玉にジリジリと
空を昇る頭山
何処までも上昇する
頭山の桜が上昇する
いつわりの宴を引き連れて
頭山が、春の頭山が
水道管がゴボゴボ鳴った
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