第1章

100/115
前へ
/115ページ
次へ
  その夜、一人寝台に横になってセシルは色々と考えた。  自分に出来る事はなんだろうか、と。  一応セシルは王子だ。今までは何もできなかった自分だが、もしこれからもっと体力がついて元気になったら国の公務を手伝う事だって出来るはず。  そうしたら…何をすればいい? 何をしたい?  そうだ…南の大陸に渡る二人の為にもっと南の大陸と交易を深めればいい。船は出ているけれど頻繁にではないし、盛んに行き来しているわけではないから書簡をを出そうにもちゃんと行き着くのかも不安だ。交流が盛んになれば気軽に行き来できるようになるかもしれない。  自分の弱い体ではそううまく行く事はないかもしれないけれど何か…セシルの事を助けてくれた二人にしてあげたいとも思う。  アラステアの事は…会わないとはいわれたけれど、ここに王宮に出入りするバクスター男爵がいる。まるきり切れるわけではないはず。  夜一人で寝るのが怖かった。翌日目を覚ます事が出来るのだろうかと思う位息苦しい日もあった。  この数日で随分と楽になったとはいってもキリルに再三にわたって注意されているように弱りきった体が急に完治するなんて事はないのかもしれない。けれど何をするでもなく消えそうになっていたセシルの存在はアラステアのおかげで未来を見る事が出来るようになったんだ。  話し合いの後、起きていた体は疲れを訴えセシルは早々に寝台に戻った。呼び鈴を枕元に何かあったらすぐに鈴を鳴らしてと大丈夫だよと言ったのに心配したキリルに何度も確認された。  …ちょっと疲れただけなのに。キリルもイリヤ王子もセシルがセラウスの王子という事に関係なく心配してくれているのが分かる。そして今までの王宮での事を考えればそれはセシルが王子であったから心配されていただけでセシル個人を本当に心配してくれていたのは一握りの人しかいなかったと改めて確認する事ができた。  心配してくれていたと思っていた義母が毒をなんて考えてみた事もなかった。今思えば義母上の心配は表向きだったと分かる。セシルが胸が苦しくなる発作を起こした時も駆けつけてくれるのはいつもサミュエルと父だけで、義母上は見舞いの口上と薬湯が届けられるだけ。  …その薬湯にまさか毒が混入されているとは…。  セシルは王位など最初から求めていないのに…。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

179人が本棚に入れています
本棚に追加