第1章

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 朝の光りが窓から射し、眩しさにセシルが瞼を開けるとすぐに視界が揺らめいた。  そしてじわりとまたも瞳が潤んできた。  顔も目も腫れぼったいのにまだ泣き足りないらしい。  …まさか…アラステアが血縁だったなんて…。だからセシルを心配して…だからずっと助けてくれたんだ…。  セシルは顔を覆って鼻を啜った。  泣いたままいつの間にか眠ってしまったらしい。アラステアに抱きついたままだったのにちゃんと寝台に入ってたのはアラステアがそうしてくれたのだろう。  アラステアにとってはただの甥の感覚なんだ…。だから大事で特別。  どうしてセシルに会いに来ていたのか、キリル達に言われた特別の意味も納得した。両親も叔父も叔母も姉も皆亡くし、残っている血縁がきっとセシルだけなのだ。だから特別なだけ。だから大事なだけ。  セシルみたいにそれ以上の感情がそこに含まれる事はないのだ。だからセシルが元気でいてさえすれば傍にいなくとも平気なんだ。  「セシル王子? おはよう。具合は大丈夫…って…」  ノックの音と共にキリルが顔を出してくるとセシルの顔を見て絶句した。  「どうしたの!?」  なんでもない、とセシルはまた涙をいっぱい瞳に溜めながら首を左右に振った。  「…また黒獅子に苛められたの?」  苛められたという言葉にセシルは泣き笑いを浮かべるとキリルがはぁと大きな溜息を吐き出した。  「何してんだ…」  「あ、違うの…アラステアに苛められたわけじゃないから…」  「あんな奴庇う事ないよ。イリヤ、セシル王子の顔冷やしてあげないと」  イリヤ王子が続けて顔を出したが分かったとそのままいなくなる。  「ごめんね…二人には色々心配とか迷惑ばっかりかけて…」  「そんな風には思ってないから」  「あの…アラステアは僕の事考えて…」  きっと言ってくれたんだと思う。だって言うつもりはなかった、と言ってたから。きっとセシルがアラステアの事を物欲しげに見ていたのに気付いたのだろう。だから…牽制されたんだ…間違っている、と。  でも自分は間違っていない、とセシルは思う。  だって弟のサミュエルの事も好きだけど、今離れていても全然平気だ。王宮に戻ってもサミュエルは普通にセシルを迎えてくれるはず、とも思う。この感覚がきっとアラステアからのセシルなのだろう。
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