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「とにかく! そんな事は後回しだ! セシルを休ませないと! 俺が今日はセシルについてる」
サミュエルがセシルを守るようにセシルの背に手をかけながら立ち上がり、セシルもゆっくりと立ち上がった。
「セシル…どことなく…大人になったな…?」
父王が優しそうな顔に笑みを浮べながらそう言った。父上もサミュエルも王妃がこんな事になって心に痛手を受けているだろうにセシルには見せないようにしている。
「…はい」
素直にセシルは頷いた。ずっと悲観ばかりしていた自分はもういない。
素直に頷いたセシルにますます父上は眩しそうな目を向けていた。
「ほら、セシル」
「うん」
サミュエルに促されてセシルは父王の部屋を辞し、自分の宮へとサミュエルと向かった。
その後ろを黒鵺がついてきていればどことなくほっとしてしまう。アラステアに繋がっている人だからだろうか?
「お前…本当に信用なるのか?」
「サミュエル!」
サミュエルが廊下に出るとすかさず黒鵺に向かってそんな事を言い出しセシルはそれを咎めた。
「だって…セシル…」
隣を歩くサミュエルが剥れたように唇を尖らせている。
「俺だってずっと心配してたのに…」
「うん…ごめん」
「セシルは俺が母上と共謀してると思った…?」
「思ってないよ」
「でもずっと連絡なかった…」
「それは記憶が混乱してたからと説明したはずだけど?」
飄々と黒鵺が口出しするとまたもサミュエルが鋭い視線で黒鵺を睨みつけていた。
「サミュエル」
「……」
セシルが注意するとサミュエルはおとなしく黒鵺から視線を外した。
小さい頃からそうだったけれど、サミュエルはセシルに近づく者を威嚇する。きっとセシルを守っているつもりなのだろうけど。
変わらないサミュエルにセシルはくすりと笑ってしまった。
「今日はセシル一緒寝てもいい? 小さい頃みたいに」
「…そうだね」
セシルが頷くと隣でサミュエルが満面の笑みを浮かべていた。
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