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「本当に母上が…って知らなくて…なんて俺は馬鹿だったのか…。まさか薬湯に毒が…だなんて思いもしなかった。しかも薬師や医師まで抱きこんでなど…」
セシルがアラステアの傍で、バクスター男爵家でのうのうとした時間を過ごしていた間にすっかりすべてが露呈していたらしい。
「裁判に、と俺は言ったのに! 父上が」
「サミュエル…お前の母上なのに…」
「毒殺を企てるような母親などいらない!」
烈火のごとく吠えるサミュエルを見ているとザウフトの烈王と言われているディルク王が会った事はないけれど浮かんできそうだ。
「そんな事言うもんじゃないよ…。たった一人の母上なのに…。僕は母上に会いたくとも会えないんだから」
「でも! セシルを手にかけようとしたのに…」
「きっと…ほんの少し間違っただけだ…。僕が弟だったらこんな事なかったのかもしれない」
運命のいたずらなのだろう。
ずっと結婚から子が出来なくて、臣下から父は妾妃を進められ、その妾妃が懐妊してすぐに正妃も懐妊なんて…。
ほんの少し待てばきっと幸せな王室だったのかもしれないのに…セシルの存在があったおかげで王妃はこんな事をしてしまったのだ。
「どうしてセシルは…そんな風に許せる? 母上のせいでずっと寝たきりのような生活だったのに」
久しぶりの自分の部屋に戻り、セシルはすぐに横になった。やはりいくらかバクスター男爵家で動いてはいたけれど、急に外を歩くのはかなり体に負担がかかるらしい。
アラステアに用意してもらった腰の細剣は寝台脇に立てかけてもらい、セシルの視界に入るようにしてもらっていた。
これを使えるようになったら…アラステアは褒めてくれるだろうか? がんばったな、って撫でてくれるだろうか?
会わないと言われているのにも関わらずどうしてもそんな事を考えてしまう。
窓をちらりとみた。いつも真夜中にアラステアが忍び込んで来た窓だ。そのうち会いに来てくれないだろうかと甘い考えも浮かんでしまう。
「セシル? 聞いてる?」
「あ、ごめん」
アラステアの事を思い浮かべていて意識がぼうっとしていたらしい。
「サミュエル王子、セシル王子は疲れているご様子だから少し静かに一人にさせてあげたら? セシル王子は薬師との面接もあるし」
「……わかったよ。じゃ晩餐の時間にまた来る」
「うん。…じゃ後でね」
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