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「しかし俺がいる間はいいけど…どうするんだ? ずっとは無理だぞ?」
「当然だな。それじゃ俺が〝仕事〟をしなきゃいけなくなる。せいぜい一週間位か…いや…船の手配等俺がしてやれば二週間位はいけそうか? どうせ報告も俺の役目だからな」
「…黒獅子がいいなら俺はそれで構わないけど」
「…どうなるか俺にも分からんがなるべくぎりぎりまで頼む」
アラステアの言葉に薬師殿がこくりと頷いていた。
どうやらアラステアが薬師殿にセシルの事を頼んでいるらしいが…どうしてアラステアはこんなにセシルの事を考えてくれるのだろう?
「薬師殿…」
この人はアラステアの事をよく知っているのだろうか? セシルは年に何回かしか、しかも真夜中にアラステアが来てくれた時にしか会った事がなかったのだが…。
いいな、と薬師殿を羨ましげに見てしまう。
「僕の事はキリルでいいですよ? セシル王子」
「キリル…」
どうやらキリルは少しの間いてくれるらしいから…その間はアラステアもいることになるのだろうか?
「キリル…よろしく…ね…?」
「ええ」
セシルがたどたどしく言うとキリルがにこりと笑みを向けてくれる。それが魅力的でじっとセシルはキリルに見入ってしまった。
健康的な顔色に赤い髪、薬師としての自信も見える。それに比べ自分は弱った体に顔色の悪い何も出来ない名ばかりの王子。同じ王子だろうさっき見たウルファの王子は体格もよくて輝く髪をした人の目を惹くような人だった。
比べても仕方がないと思っても何も出来ない自分がどうしても恥かしく思えてしまう。
「俺は王宮に探りを入れてみよう」
「黒獅子…自分のコマを持っているんだ?」
「一応それなりに。情報があてにならない時もあるからな」
「…ふぅん…。そっちはまぁ黒獅子の管轄だろうから。俺はセシル王子の事だけ見てればいいな?」
「ああ。そうしてくれ。…セシル、いいか? 今の所信用していいのはこの薬師殿とウルファの王子だけだ」
アラステアがベッドに手をかけセシルの目を見ながら諭すように言ってきた。
「あの…さっきの…言ってた…義母上が…って…」
「まだ証拠も何もないから分からない。だが可能性は一番高いだろう」
「でも…本当に…よくしてくれて…」
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