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──なあ、志緒。
知ってるか。
人の皮を被った獣は、
汚れてない血肉が
大好物だってこと。
ちょうど、今のお前みたいな。
憐憫と後悔と、
長く置き過ぎて
凝り固まった寂寞が
俺の心臓をこれでもかと締め付ける。
気付いたら彼女の腕を取って、
楽屋に引きずり込んでいた。
「久しぶりだな、志緒」
「……」
「しばらく会わないうちに、
すっかりデキるOLさんって感じ」
胸の中でぐらぐらと
滾る感情をこらえながら、
とりあえず再会の挨拶代わりに
褒めたつもりだった。
だが、志緒は眉根を寄せて
顔を背け、
俺を見ようとしない。
……このくそちび、ムカつく。
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