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苦しかった。
「うっ! がっ、ぐっ・・・」
突如、襲いかかった耐え難い息苦しさに、郁哉は噎せかえり、パッと目を開けた。
しかし、何も見えない。
視界に映るのは、黒一色の闇だけ。自身の姿さえ認識できないくらい、真っ黒な闇に支配されている。
それでも、郁哉にはわかる。
ここは自分の部屋だ。この頭を支える膨らみ、背中に伝わる感触。これらは、いつも寝ているそれ。
つい今しがたまで、この慣れたベッドの上で眠っていたのだと、郁哉はすぐに理解出来た。
だけど、わからない。この人影は・・・。
目が慣れてくると、カーテンの隙間から零れる月明かりが、暗黒の空間に、ぼんやりと人の輪郭を浮かべている。
しかも、ただいるわけじゃない。自分の上に股がり、首を絞めつけているではないか。
首を圧迫する苦しさ。腹を抑えつける重さ。
リアルなこの感覚からして、夢ではなさそうだ。
かと言って、これが現実なら状況がのみ込めない。
何故、こんな事に。それに、この影の主は、一体何者・・・。
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