第1章 再会は始まり

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見かけ通り、口は悪く無愛想で、一度言い出したら聞かない。でも、心根はとても優しく、郁哉は父のように慕っている。 美緒もそうだ。同様に思っているからこそ相談したのだろう。その村木にしろ、二人が気にかかる。だから、こうしてでたはず。 ちょっと強引ではあるが、種がわかれば村木らしく、郁哉はなんだか笑ってしまう。 「おい、何ニヤついてやがる。現場だぞ!」 「あっ。いや、すみません」 村木に叱咤され、自分がいる現状を再認識した郁哉は、改めて恐る恐る惨劇の痕を見渡してみた。 しかし、吐き気はしない。大量の赤黒く濁った血で濡れるフロアに、頭をカチ割られ、肉片の飛び散った顔もままならぬ六人の無惨な骸。 目に余る陰惨な光景ではあるが、慣れなのか顔を背けずにいられる。 その郁哉の視線が、あるモノを捕らえた。 携帯だ。渇いたフロア部分に、ポツリと出来た血溜まりの上に、おもむろにスマートフォンが落ちている。
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