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今にも降りだしそうな不安定な空の下、郁哉は署の裏にある駐車場に、一人呆然と佇んでいた。
つい今しがた、沢井陽二を乗せた護送車が、地検に向け出発するのを見送っていたのだ。
きっと彼は、検事調べでも否認を貫き続けるだろう。自分にまったく記憶のないものを、それも人を殺めただなんて、絶対に認めたりはしないはず。
沢井が護送車に乗り込む前、郁哉は耳打ちした。
『自分の意思を曲げるな!』と。
そう一言だけ彼に伝えたが、それをどう受け取ったかは定かではない。
ただ、護送車に乗り込む際、彼はペコリ会釈してきた。少なからず、郁哉を味方と認めたのかもしれない。
でも、だからって、なんとかしてやれる問題ではないかもしれないが、折れなければ裁判も長引く。
もしかしたら光明が開けるかもという、そんな甘い打算。
その希望となるべき、同じような事件がまた起きた。
警察官の銃を奪っての無差別射殺事件。二人の警察官を含む、五人の尊い命が消されてしまった残忍なものだ。
この被疑者である佐竹良子もまた、犯行を否認している。目撃者多き場所での犯行にも拘わらずにだ。
郁哉にはそれが、沢井の件と非常に酷似していると思えてならない。
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