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「……っくしゅん!」
仔猫が半径2m以内に寄る度に、反射的にくしゃみが出た。
「よ……寄るな!」
言いながら、机の上を彷徨う仔猫から逃げる。あどけなくふにゃふにゃと鳴く茶虎の仔猫は、とっても可愛い。だが、それとこれとは別の話だ。
するとまりかがやって来て、仔猫をひょいと抱きあげた。
「さやか、猫嫌いなの!?」
「き、嫌いじゃないけど……っくしゅん! ア、アレルギーなんだ……っ!」
まりかはくしゅっと顔を崩して笑うと、仔猫を抱いたまま足を一歩進めた。
「うりゃ」
「ま、まりか?」
また一歩。
「うりゃ」
「や、やめろ……アナフィラキシーショックを知らないのか! シメるぞッ!」
グズグズ半泣きでちっとも迫力のないあたしは、まりかの歩みにあわせて後ずさる。
「にゃーおぉーっ!」
「いっ、いやぁーっ!!」
まりかが眼前まで仔猫を差し出した。信じられない、この女、殺す。
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