琥珀の憧憬

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   小さく笑うと、将司は仔猫の頭を撫でながらカバンを手に取り、歩き出す。 「将司?」  そういえば、何故こんな田舎の大学にやってきたのだろう。彼はとんでもないお金持ち校に転校して、そのまま付属の大学に進んだはずだ。 「君に迷惑をかけないように、今日はもう失礼するよ」  なんとなく離れがたくてそのまま数歩将司を追い、思わず「帰るのか?」と訊いていた。将司は仔猫を抱いたまま、上半身だけで振り返る。 「何か、不都合があるのかい?」  そう訊ね返されても、将司を引き留めるだけの理由はなかった。 「戻ってきたのは、ちょっと忘れ物があって。駅前のホテルの部屋を用意してもらってるんだ。ルームナンバーは3055。東京に戻るのは、明日の昼かな」 「そ……っ、か」 .
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