1 賭け

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1-8 優しくなだめている親父の声に、やっぱ夫婦なんだな……、と思う。  あんなに弱々しく誰かに頼る母さんも見たことない。今までは俺を育てるために強がってくれてたんだろう。  しばらく帰れなくなりそうだ、と病院だから電源を落とした携帯をポケットの中で握りしめる。 「将志、ちょっと」  親父が病室から出てきた。 「……ああ」  家族会議だな、と悟る。  談話室に場所をかえ、向かい合わせに座った。 「将志は帰りなさい。お前がいたら、佑子がお前と村橋先生を心配してしまう。ワタシはもちろん……いてほしいけど、今は佑子の体が大事だ」 「……母さんの店、どうするんだよ」 「売る」 「はあ!?」 「とにかく、今は佑子の体が大事だ」 「いや、何も手放さなくてもいいんじゃ……」 「将志はワタシの息子だけど、今はもう村橋先生がいる。いつまでも借りられない。それに、佑子の夢で始めた店だ。佑子が働けないのに続ける意味はないよ」 「……わかった。でも、それまでは手伝うから。これは武さんも了承してる」 「無自覚にモテる人だからね、あまり村橋先生を一人にさせないほうがいい」
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