53人が本棚に入れています
本棚に追加
1-10 とりあえず武さんに電話してくる、と通話可能エリアに移動する。
談話室でも通話できるけど、武さんとの会話は誰にも聞かれたくないし、日本語だからといって油断もできない。
ガラスの扉をあけ、時差を確認し、コールする。メールより、やっぱり声が聞きたい。
耳慣れない呼び出し音が、途切れる。
『……将志?』
俺の好きな声だ。心配そうで、おだやかで。名前を呼ばれただけなのに、軽く意識を持っていかれそうになる。
「……うん、俺」
『佑さんの具合……どう?』
なんかもう……なんでもいいから喋ってて。
『……悪いの?』
ああ、沈黙が長くなってしまったから、心配させてしまったのか。……なにやってんだ、俺。
「武さんあのね、俺……、赤ちゃんできたみたい……」
『……っ!?』
ゲホゲホと咳き込む音だけが聞こえてくる。
最初のコメントを投稿しよう!