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「会いたい…」
両手を合わせ、溢れだしそうな涙をこらえながら、震えた声でそう呟く。
「……なんて、できるわけねぇよな…」
そして乾いた笑いをこぼした。
「本当に会いたいか?」
すると突然、どこからともなく声が聞こえた。
凛とした澄んだ声。
幻聴かと思った。
だけどそんな幻聴にさえ縋りたくなるほど、俺はあいつに会いたくて仕方がなかった。
「会いてぇよ……」
「そうか。そのためならお前はどんなことでもできるか?何を犠牲にしてでも会いたいか?」
強く言い聞かされるような声に、少し怯える。
だが少しも迷うことなく答えた。
「なんだっていい!あいつにまた会えるなら…!」
声のする方向を探るようにあたりを見回しながら叫んだ。
「……分かった」
「本当か!?」
「彼に会えるのは一週間だ。そのあとお前は代償を払うことになる」
「分かった!なんだってする!命を落としたってかまわない…!」
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