ルームシェアの君へ

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昼下がりの公園 子供達の元気な声が響く公園の端のベンチで、タバコを吸いながら珈琲とサンドイッチを食している。 仕事の休み時間ではない。 部屋にいたくなかったのだ。 「良い天気だなぁ。」 そう思いながら空を見上げ、煙を吐き出した。 綺麗だといいつつ、有害物質を吐き出す自分がやけに滑稽にみえる。 携帯灰皿に何本目かのタバコを捨てていると、ふと隣のベンチに座っている女性に気付いた。 やけに顔が青白く、思い悩んだ顔をしている。 パーカーにジーンズ、スニーカーと、20代前半ながらお洒落っけのないその子は、今にも自殺を考えているようにも見えた。 いやいや 今日の私だって泣きたいぐらい酷い1日なんだ。同情してる余裕なんてない。 思いなおし、もう1本タバコに火を付けると、今度はしくしくと泣き出した。 一気にタバコの味の苦みが増す。 「だーもう!」 頭をかきながら、コンビニの袋から缶珈琲を取り出しズカズカと隣に歩いていった。 「いい大人が外で泣くな。これでも飲んで、泣き止め。」 驚いた表情で目を大きく見開く彼女は、思わず笑ってしまいそうなくらい間抜けな顔だった。 「ブラック・・飲めない。」 「飲めなくても飲め。大人なら。」 受け取らない彼女を待つ気も無く、膝の向かってやんわり投げれば、反射的に受け取った。 ここは場所が悪い。河原にでもうつろう。そうだ、次はお酒でも買おう。 咥えたままのタバコを勢いよく吸い込み、短くして空になったビニール袋をゴミ箱に捨てた。 「あの、ありがとう、ございます。」 「別に。」 「帰るんですか?」 関係ないだろ、と突き放すには、彼女の表情は捨てられた子犬のようで可哀想なものだった。
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