ルームシェアの君へ

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「もう終わりだ、終わり-。あんたも早く帰りな。」 「帰る家なんてありませーん。」 ばふっと草の上に寝転がり、大の字に手足を広げた。 「追い出されたし、実家にも帰れないし。ここで野宿するー!」 「酔ったままじゃ、死ぬぞ?」 「それもいいかもねー。もう生きてるの疲れたし、最後に楽しく飲めたし-。」 生きてる意味を見出せないのはお互い様。 こいつがどうなろうが、知ったことないのに、今見捨てたら駄目な気もして。 強引に腕をとり、肩に回していた。 「とりあえずうちに来ればいい。」 「いーよいーよー。」 「酔っぱらいは黙ってろ。」 通りがかったタクシーを止め、投げるように入れ込みマンションまで頼んだ。 少し酔いが覚めたのか、不安げにこちらを見てくる。 「私、女の子とやった事ないよ?」 「は?」 なに言い出しんだ?こいつ? 「やるんでしょ?この後。」 びこん!!酔っぱらいにお得意のデコピンをお見舞いすれば、声にでないほど悶絶した。 「生憎、あんたはタイプじゃないし、女なら誰でも言い訳じゃねーんだよ、調子に乗んな、ボケ。」 「酷い!そして痛い!」 「黙れ、酔っぱらい。」 「私は杏菜よ!名前あるわ!」 今初めて知ったわ。 もう一度デコピンを食らわしてやろうかと思ったが、必死に両手でおでこをかくす杏菜がおかしくて、思わず大笑いしてしまった。 まさか、こんな日に大笑い出来るなんて、予想もしてなかった。 「気が変わる前に人の好意には甘えとけ。行く当てもないなら、なおさらな。」 これはただの気まぐれだ。 笑わしてくれた杏菜にちょっとしたお礼。 そう納得させながら、彼女をソファで寝かせた。
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