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爽やかな朝
鳥の鳴き声
朝のニュース音
正座した女性
1つだけ不似合いな光景。
「どうしたの?」
寝室から目覚めて起きてくれば、ソファで寝ていたはずの杏菜が床で正座していた。
「あの、あの・・色々みっともない所をお見せしてしまいまして・・。」
あわあわと取り乱す彼女は、昨日の図々しさの影もなかった。
お酒で本心が見えるとはこの事だが、相当酔っていたから仕方ない。
「お互い様だと思おう。私も愚痴ったし。」
「・・絶対私の方が酷かったです。」
恥ずかしいのか両手で顔をかくし、丸まってしまう杏菜。
少しくらい酔った方がいいのではないかと思うぐらい気の毒だな。
「クヨクヨすんな、朝から鬱陶しい。」
「す、すみません・・。」
「何か食べれる?パンぐらいなら焼けるけど。」
「え?いえ!そんな!」
「つべこべ言わず食え。」
「はい!」
おどおど、びくびく。お前は小動物かとツッコミたくなったが、堪えた。
カウンターにたち、何かしようとうろうろする彼女を座らせた。
「家賃2万、奥に一部屋空いてるからそこを使えばいい。うちにあるものは好きに使っていい。ただし、杏菜の恋人、もしくは知り合い等人を連れ込むの厳禁。破ったら即退去ね。」
「・・・・・。」
「聞いてんの?」
「あ、はぁ。え?!ここに住んでいいんですか?!」
「気が変わる前に・・。」
「待って、待って!好意に甘えます!」
タクシーの中で言ったことは覚えていたらしい。
話もつき、朝食タイムにした。
とりあえず、下着や服は買ってやるか。と、思ってすぐ、すでに情がわいてしまっている事に溜息が漏れそうだった。
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