ルームシェアの君へ

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「杏菜?飲み過ぎた?」 店を出て解散後、終始無言の杏菜に声をかけるが、返事はなかった。 黙って会わせたのが、気に入らなかったんだろうか。 「好みのタイプじゃなかったかな。」 良いチョイスしたのに。と、今回の選抜メンバーを思い返していると、くるりと杏菜は振り返り、それはそれは抑揚のない淡々とした声で、 「いえ、全員素晴らしい方でしたが、私には不釣り合いです。」 と、応え、またスタスタと前を歩いた。 何をそんなに怒っているのだろう。 「杏菜は良い奥さんになれると思うよ?一緒に住んでて私が思うんだから、本当だよ。」 ピタッと彼女の足が止まった。 「いい男と付き合ったら、絶対杏菜は幸せにしてもらえるよ。」 「幸せ?」 「うん。尽くすに値する男達だよ、あいつらは。」 なんせ、私が認めたやつらだから。 と、言い終わった所で、杏菜の肩が震えているのに気付いた。 顔は見えないが、泣いているのだと察した。 「好きな人に・・。」 「え?」 「好きな人に愛されなきゃ、意味ないんですよ!」 杏菜? 突然の展開に頭がついていかない。 とりあえず杏菜の肩に手をやれば、ぱしん!と払われ、シャツの襟元を掴まれた。 「知子さんに、男と幸せになれなんて言われたくありません!」 せっかくの化粧を台無しにし、涙を流しながら怒鳴る彼女に微笑ましい気持ちがわいたのは、とんだ場違いだと思った。 が、ここで笑えば誤解を与えてしまうと、頬に力を入れ、襟元を掴む手をそっとどかした。
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