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「分かった。杏菜の気持ちも考えずに、余計な事してごめん。」
「・・知子さん・・。」
「子供じゃないんだから、好きな人ぐらい自分で見つけたいよね。」
いくらいい人でも、親にお見合いをすすめられるようなもので、気持ちのいいものじゃなかったかもしれない。
キチンと意見も言える彼女なら、尚更だ。
「ちゃんといい人見つけろよ?変な奴だったら殴るよ?相手。」
「いい人なら、もういます。」
「え?ほんと?!」
全然気付かなかった。誰だ?職場の人?もしかしてあいつか?
誰か考えていれば、杏菜はふぅっと溜息をついた。
「私の好きな人は、嫌いなものなのに見栄張って平気そうに食べたり、怖がりなのにホラー映画を毛布被ってみたり、寝ぼけて洗顔と歯磨き粉間違えて使っちゃったりする人です。」
「は?何そのかっこ悪い人。」
「ぷっ!!」
え?なんでそこで笑うの?
てか、そんな奴のどこがいいの?
ただの・・・まぬ
そこまで考えて、今度は自分の身体がピタリと固まった。
「・・・杏菜さん。」
「なんでしょうか。」
「私、心当たりのある人がいるんですが、気のせいでしょーかね。」
動揺のあまり普段と口調が変わる私を、面白そうに杏菜は笑って見せた。
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