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《1日目 手をつなぐ》
帰り道。
高槻先生の新刊が出るってことでカネキに付き合って本屋に向かう。
人混みの向こう、本屋の看板が見えたとき。
「ヒデごめん、先行っても良い?」
カネキは耐えきれなくなったのか、俺の返事も待たずに駆け出す。
ふと、このまま人混みに紛れてカネキが消えてしまうのではないのかと思えた。
「どうしたの、ヒデ?」
困ったように笑う顔が目の前にあった。
俺の右手はカネキの左手を確かに掴んでいた。
「あ、ワリィ。」
そう言って離した手をカネキはにっこりと笑って掴んだ。
「行こう。」
そのまま小走りで本屋に向かうカネキ。
本屋の中に入るまで、繋がれた手は離れなかった。
その手は確かに温かかった。
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