第1章 サヨナラから始まる物語

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一瞬、思考停止。 その間に、バップは僕達のボートに飛び移ろうと助走をかけてきたから、さぁ大変。 もちろん、乗せるなんて真似はしないよ。 必死に漕いでいると、アリシアがボートの下に飛びだって……。 ゴォォォォォ!! 凄い水しぶきを上げて、ボートが進み始めた! 「クルーテン(クール)!!」 でも、その後ろでバップが……。 「おーい、置いてくなんて酷いぞー!!」 水の上を走ってたの……!! 忍者!? 侍!? 芸者!? ワーオ、僕もやってみたい!! 「何あれー!?」 「あれは、普通の常識人じゃできませんから」 「忍者ー!?」 「駄目ですよー、マリア君。貴方は普通の人間なんですから、人間離れした人と同じことなんて無理ですよ」 「ヤクモ、忍者!!」 「駄目だ、聞いてませんね……」 忍者、忍者は居たんだ!! 常識がない嫌な奴だけど、バップは確かに忍者!! クルーテン!! 「……はぁ、これ以上橘君の思い通りにはいかせませんよ!!」 スッと立ったヤクモは、手にポッキーを持ってたの。 それを、手裏剣っぽく投げて……、クルーテン!! なんだ、忍者っていっぱい居るんだね!? 「おおー、ポッキーだ!!」 「アリシアちゃん、もっと速度を!!」 日本のジダイゲキを間近で見ちゃって、もう大興奮! 水の上は走るし、手裏剣も投げれるし、本当に刺激的だと思う! 思ったより楽しいよ、この十六夜学校!! 来て良かったよ、お父さん! 生きてたら、この光景を千尋と一緒に見たかったな……。 千尋は、日本が好きだったから。 「走りますよ、マリア君!!」 「ヤクモ、何処に行くか決めてるの?」 「私達の寮に戻りましょう、あそこは橘君は立ち入ると罰則されます」 こんないいお天気なのに、逃げるために家の中に閉じこもるだなんて。 本当に、バップのやつはいい迷惑だよね。 でもまぁ、いいパフォーマンスを見せてもらったし、まぁよかったかな? 「八雲ー!! 真白はオレの友達だぞぉぉぉぉ!!」 「チィッ、もう来てしましましたか……!!」 八雲一人なら、どうにかなりそうだけど、僕の足が遅いからなかなか進めなくて。 口の中が甘ったるくなってきて、息も苦しいの。 もう、限界かもね? 立ち止まって休憩したいよ……。 「マリア君、追いつかれます!!」 「駄目、も、限界……」 ああ、冷たい水が飲みたい……。
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