第1章 サヨナラから始まる物語

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気がつけば、もう夕方。 ベッドの上で寝てたみたいだね。 枕元にはアリシアも寝てた。 今日アリシアは頑張ったから、疲れちゃったんだね。 アリシアを起こさないように、扉を開けるとヤクモ達の話し声が聞こえてくる。 「無理ですよ、マリア君をマチルダに帰しましょう」 「だが、しかし……」 「それか、あの馬鹿を退学にしろ」 「でも、それは……」 「今日のマリア君を見なかったんですか? あの二人の相性は最悪です」 「哉人に言い聞かせるから……」 「あの馬鹿は、綺麗な物が好きなんだ。自分の物にできるまで、ずっと追いかけてくるぞ」 「追いかけられるマリア君が可哀想ですよ」 「っていうかさー、マリアちゃんは完全温室育ちのいいとこの子なんだから、野生児の相手なんてできるわけないじゃーん?」 マリア、ちゃん……!? 「しかし、見た目のいい者を学校内に居れないと、学園の人気が下がってしまう……」 「まぁ、アイツは白兎みたいで可愛いけど、本人は凄く泣き虫で臆病だ。そんな奴が考えなしの馬鹿に立ち向かえるとは思えないぞ」 「……絶対、無理」 僕は……、僕は泣き虫じゃないもん! バップになんて負けないし、今日はびっくりしただけだもん!! 文句を言いに行こうとしたら、肩にアリシアが乗ってた。 スマフォはベッドの上に置いてあるけど。 「クルッポー」 駄目だよ、そう言う風にアリシアは首を左右に振ったの。 「でも、アリシア」 「クルッポー」 アリシアの意志は変わらないみたい。 僕に、行くなって伝えてる。 ……しょうがないね。 その場に座って皆の話を聴き続けた。 下手すると、僕は明日にでもマチルダに帰らなくちゃいけない。 そう思うと、少し寂しい。 もうちょっとヤクモと一緒に居たかったのが本音。 だって、ヤクモは始めてできた男友達だし。 まだまだ見たい物もたくさんある、知りたいこともたくさんある。 それに……、千尋が恋した『日本』を見てみたいの、僕も。 紅葉や桜が見てみたいの。 「どうしても、マリア君にこの学校に居てほしいんだ。あの子が居れば、我が学校はもっと人気が出る」 正直、さっきのバップは怖かったけど……、でもここで逃げたらもっと後悔すると思う。 絶対、逃げたくないの。
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