第1章 サヨナラから始まる物語

14/15
前へ
/15ページ
次へ
心臓がバクバクいってる。 怖くて、体に力が入らないの。 バップが無理やり窓をこじ開けるし。 腕も掴まれて、体全身に鳥肌が立ったの。 だって、今のバップは人間に見えない。 そう、恐ろしいモンスターにしか見えない。 そうしてる間に、バップが部屋に入ってきて、もうどうしよう! 「うわぁぁぁーん、もうやだよー!! 千尋ー!」 「大丈夫だ、助けに来たぞ!」 「うわぁぁぁーん、あっち行ってよー!!」 その時だった。 「哉人、お前ここで何をしてる!」 「あ、爺ちゃん。真白と遊ぼうと思ってさ」 「卯月君とは接触禁止にしただろう!?」 「え、なんでだ!? 真白はオレの友達だ!!」 慌てて入ってきたヤクモとオトネによって、バップは連れだされたけど、まだ怖くて体の震えが止まらない。 物凄い力で掴まれて、どうしようもできなくて、本当に怖かったの。 「クルッポー……」 「うわぁぁぁーん、千尋ー!!」 どんなに、どんなに泣いたって千尋はもう来ない。 だって、千尋は心臓が弱かったから、胸を押しつぶされて死んじゃったから。 わかってるんだけど、無性に千尋に会いたいの。 怖い、怖いよ千尋。 「わぁぁぁぁーん!!」 「真白ー、パパだぞー? 真白ー」 「わぁぁぁぁーん!」 「真白ちゃーん、ママよ~。大丈夫よー?」 電話から、お父さんとお母さんの声が聞こえる。 でも、まだ怖くて力が入んない。 凄い勢いで掴まれた感触が残ってて、まだ体がガタガタ震えるから。 「うわぁぁぁぁーーん!」 「もう、パパ!! なんで真白を一人で日本へやったのよ!」 「真白のためだと思ったんだよ、一人立ちできないし」 「クルル……」 アリシアが必死にすりすりしてくれるけど、体の震えは止まんない。 そのうち、だんだん眠くなってきて……。 「マリア君ー、大丈夫ですか? っておや、寝ちゃったんですか」 遠くから、ヤクモの声が聞こえる。 なんだか安心してきて、そのまま……。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加