第1章 サヨナラから始まる物語

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「いや、おまたせしたね。私が、この学園の理事長だ。卯月君、遠いロシアからよく来てくれた!」 「よろしくお願いします、でも僕もう帰りたいので」 「い、い、いや……、そ、それはちょっと……」 単刀直入に言うと、理事長って人は物凄く汗を流しながら焦ってる様子。 でもさ、バップが居る学校なんてゴメンだよね。 「僕がココに居るメリットなんてないよ?」 「ま、まぁそう言わないで……」 「マチルダのほうがいいね」 「う、卯月君。君はここのコック長になるためにやってきてもらったんだよ……」 「コック長?」 「そ、そうさ。学校を卒業したら、君専用の家も作ろう。約束するよ?」 「ふーん、それじゃそこのバップ追い払って」 「そ、それは……」 「じゃあ、マチルダ帰る」 すると、理事長はさっきヤクモが言ってた『土下座』を披露した。 「頼む、この通りだ!! 何年もお願いして、ようやく兄さんから許可をもらえたのに!」 でも、僕ロシア人みたいなものだし日本ってほとんど知らないしね。 時々遊びに来るくらいで、京都にはよく遊びに行ってた程度だし。 そんなに愛着のない国だし、土下座のパフォーマンスを見せられてもぐっとこないの。 だって、日本人って謝ればすむって思ってるでしょ? そこが、嫌い。 謝って流して、結局何も解決できてないじゃん。 「結局、理事長が頭を下げて何が解決するの? 僕は土下座のパフォーマンスが見たいんじゃなくて、具体的にこの問題がどう解決できるの? って聞きたいの」 ここまで言わないとわかんないなんて、最悪。 ここって面倒、帰りたい。 景色は確かに綺麗だったね、でも住むところじゃないよ。 「なんで、爺ちゃんを虐めるんだ!! お前のせいで俺も怒られたし、お前帰れよ!!」 「帰りたいけど、君のお爺ちゃんとやらが帰してくれないの」 「嘘言うな!!」 「さっきの話、聞いてたの?」 この日本人って、なんで言葉が通じないの? 僕、そんなに日本語変かな? 「こら、哉人!! さっきも言っただろ! まだわからないのか!」 「俺が何悪いことしたって言うんだよ!!」 「人の食べ物を盗ったらしいじゃないか!」 「それなら、また新しい物を開ければいいだろ?」 当然、という顔でバップはため息を付いた。 どうやら、日本が変じゃなくてこのバップが可笑しいらしい。
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