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小春日和が続き、寒さも和らいだかと思ったら急に東北上空が寒気におおわれたとある冬の日。
『バッテリーが上がってしまって、車は修理に出してしまいました。
明日はこまちでそっち行きます。寒いので、暖かい所で待ってて下さい。
着いたら連絡しますね。』
恋人からのメッセージに思わず口もとが綻ぶ。
携帯のメッセージのやり取りだと、標準語になる瑞樹。
標準語で話す時の瑞樹はのんびりほんわかしてて、とても体育会系出身者には見えない。
教育係をしていた時、取引先で一生懸命標準語を話していた瑞樹を横で見ているのが好きだった。
でもひとたび秋田弁を話すと...
「あぇっ、しこーたましばれるごどや!!なんだもんだ!?まんつ!!
はぇぐ、ぬぐだまりてぇ!!」
(うわっ、メチャクチャ寒いんだけど!!何なの、これ!?
早く温まりてぇ!!)
早口にそうまくし立てられると、時々理解し難い時がある。
(寒いから、早くどっか行きたいんだろうな...)
雰囲気からそう推測しつつ、その背の高い顔を見上げる。
・
・
・
『ホームで待ってるね。何号車に乗ってる?』
到着10分前に送ったメッセージに、即返信が返ってきた。
慌てて送ったのだろう。全部平仮名で返事が返ってきたところも可愛くて仕方がない。
「なしたぃじ?」
(どうした?)
「ん、いや瑞樹寒そうだな~と思って。」
「今日しんたげ、さんびぐねすか?
なんも、こんたさびどごで待ってねくてもいがったいじ。どっかみへこで待ってでもいがったのに。」
(今日すごく、寒いよね?
わざわざ、こんな寒い所で待っていなくてもいいのに。どこかお店で待ってても良かったのに。)
「うん、そうだね。
じゃあとりあえず暖をとるためにお茶でもしよっか?」
久々に会えるから、早くその顔が見たかったから。
瑞樹を驚かせたかったから、コーヒーショップではなくホームで待っていたのは内緒。
慌てふためいたり、寒さに鼻の頭を赤くしたりする顔を最初に見るのは僕の特権だよね?
小雪の舞う新幹線上りホーム。
寒いと無意識にくっ付いてくるのを瑞樹は知らないんだ。
一人内緒の幸せを僕は今日も噛みしめる。
<とっぴんぱらりのぷう>
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