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「先に、仕事してくる。夜になったら身体空くから、それまで帰るなよ」
「え?」
あたしの頬を、嵐の手のひらが名残惜しそうにすべっていく。それとともに口角を上げて不敵に微笑む彼の顔は角度を変えていった。
あたしの視線がそれに追い付いた時、嵐の瞳がやわらかく溶ける。初めて見るような、優しさを伴って。
そう感じたのは、気のせい?
テニサーの喧騒の中取り残されて、遠くなっていく嵐の背中を目で追いかける。やがて彼の姿は見えなくなった。
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