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父と兄を見据えて、恐怖心を打ち消すように口を開いた。
「…ずっと、お母さんと私の存在を無視してきたのは、お父さんとお兄ちゃんじゃない。」
「親に向かってその口のききかたは何だ?」
声を張り上げられても、怯むわけにはいかない。
今まで言えずにいた本当の気持ちなのだから。
「父親として、私に愛情をかけてくれたことなんて一度もなかった。
夫として、お母さんを愛していたとも思えなかった。
私たちはお父さんとお兄ちゃんの道具に過ぎない。
会社が危ないから私を要に売り渡したくせに、入籍したことの何がいけないの?
お兄ちゃんだって、卒業式のパーティで早く結婚しろって言ってたじゃない。
今更そのことで私のことはともかく、要を責めるようなことは言わないで!」
怒りなのか悲しみなのか、それとも両方なのか、涙が溢れ出した。
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