第1章 幽霊うわさと新しい友人

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 隼人は 良幸のように甘やかされてはいない。  隼人の母は3年前亡くなり、父は毎晩おそくまで仕事。兄は大学でアパート暮らし。隼人は年中 1人ぼっちで近所をさまよう少年だ。  婚約者を探す花姫が さびしい隼人に声をかけてもおかしくない。  ただ 隼人は「花姫の事は誰にもしゃべってない」と言う。中学生で反抗的な彼は 大人に「幽霊を見た」なんて しゃべる気がしなかったのだろう。大人は信用しないが 年の近い良幸とは 幽霊の話をしたがった。  家も近いし 良幸も 幽霊なかまで 強い友だちに喜んで付き合う。  でも隼人は ケンカがしたくて剣道部に入った。剣道の精神なんてまるで無い。親を困らせる危険な遊びが大好きだ。  隼人は車の多い国道で わざと信号の無い所を車をよけて走り、ひきそうになった運転手に 「バカヤロウ、あぶねーじゃねーか」と どなられた。  マンションでも カベから3階に登り 途中で管理人に見つかって 怒られた。  学校も時々さぼり、危ないことをして きっと何か怒られているにちがいない。  でも隼人は 良幸には押しつけず 自分1人で危険を楽しんでいるようだった。 「やめなよ」良幸が危険を止めると 隼人は肩をすくめて喜んでやめる。良幸といると気が休まるようだった。  中学生の背の高い彼を止める者は 他にだれもいなかった。
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