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幸也は兄貴の前に、五千万を用意して納めて貰おうと差し出した。
幸也の女が、宝くじに当選した金額の半分。
――――――
決意は変わらない。
組に上納すれば波紋も無く、組から退くのもさほど難しくはない。
しかし、甘かった…。
兄貴の地位は総活部長。
一筋縄では無理なことは分かっていたが、目の前に大金を積まれたら、許しを請うと思っていた。
兄貴は半分は組に納める。が、残りの半分は持って帰れと言った。
条件があると察した幸也は、それが何なのか今は知る由も無かった…。
――――――
「幸也、お前の女を二千万円で買いたい…いいか?」
「…兄貴…それはちょっと酷じゃないですか」
「お前が波紋になったらどうするんだ、この女」
「………」
「俺が面倒見るからきっぱり忘れろ。心配するな。悪いようにはしない。お前を愛して尽くした女だ、俺の妾にするつもりなんてない」
「兄貴…じゃあ何を考えてるんですか…」
「これから考える」
「兄貴…いったい……」
「心配するな。ただな、お前が銭を納めたからと言うだけでは、頭は納得いかんだろ?幸也の大切な者を奪ったと報告すれば、そこそこ筋は通る。だから女を置いていけ…」
「兄貴…俺は、堅気になってコイツと所帯を持とうと考えていたんです」
「だろ?お前の大切な者を奪わなければ、お前自身の身も危ういぞ」
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