誘惑だらけのショッピング

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それから特上と書かれた寿司を3人前と、大トロ、中トロ、ネギトロがそれぞれ2貫ずつ入ったまぐトロセットというものを注文してから、思い出したように件の用向きを彼女に伝えた。 「悪い。来週は病院の年間行事があって会えない。」 「……それって、ばーべきゅー?」 「水嶋から聞いたのか?」 「……鞠子から聞いた。」 幼くなった口調と共に、その唇は小鳥のくちばしのように尖っていく。 この拗ね方は、少々めんどくさいやつだ。 彼女と同じ職場の鞠子というのが、俺の後輩である小籔の女だということは随分前から知っていたが、あいつとはグループが違うのでまったくのノーマークだった。 っつーか小籔の奴。 研修医の分際で彼女なんて連れてくんじゃねーよ……! ノリだけでなく頭と口も軽い後輩を腹の底で罵りながらも、イジけてしまった恋人をそのままにはしておけず。 ソファに寝そべってもじもじと不機嫌を表現している彼女を抱き起こし、できるだけカドが立たないようにと優しく声を掛けた。
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