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「あぁ…えーと…。藤村…さんだってだな。」
「理事長先生の娘さんだから、でしょ?」
「ならわかるだろ?志…、あー…。藤村さんは水嶋の彼女であっても一応院の関係者なんだ。ただの従業員風情の俺の恋人とはわけが違う。」
「…………。」
やばい。
泣きそうになってやがる…。
「お前だって嫌だろ?教授や准教授の嫁さんとか、みんなめちゃくちゃ性格悪いんだぞ?そりゃあもうクソババアばっかりだぞ?」
「くそばばあって…。」
「新参者のお前が一人ぼっちで突っ立ってたら、それこそホントに喰われるぞ?お前があのデカイ網の上で焼かれることになったら俺は……、あぁ…。やっぱり無理だ。お前を連れてくなんてできるわけないだろう?」
少々誇張しすぎな気もするがそれも致し方ない。
大袈裟に『残念でしょうがない』風を装いながら、あと数秒後に泣き出すのであろう彼女の両頬を優しく包む。
わかってくれ千可子。
俺のこの苦渋の決断を。
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