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付き合いたての頃はその主導権を握らせてもらっていたのに。
こうなった俺は最早動物園の檻にいるライオンと変わらない。
それでも、幸せそうに笑う彼女が『虎夫だーいすき』という呪文を唱えるだけで何でもできてしまえるんだから……。
やっぱり俺は省エネ且つ、エコロジーな単細胞バカなんだろう。
「ね、やっぱり明日100均寄ってから行く?」
「……別にいいだろ。毎年やってんだから道具は全部揃ってる。」
「でも…。奥様たちに嫌われちゃうかもしれないじゃない…。」
そう言って困ったように頬に手を添える仕草から察するに、俺の方便はそれなりに効果があったらしい。
「嫌なこと言われたらとりあえず俺のトコまで走ってこい。俺はホタテ係だから、だいたいコンロのすぐそばにいる。」
「ふふ、わかった!」
「ほら。じゃあ、このお店屋さんはそろそろ店じまいにして、とっとと風呂入って寝るぞ。」
「うん!」
そう元気よく返事をした彼女は、素早くリュックに道具を突っ込んでからパタパタとスリッパの音を響かせて玄関に荷物を置きに行った。
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