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「お電話頂いた、佐藤さんですね?」
時間外診療入り口から、院内に入ると
すぐに芹南の診療が始まった。
痛みの時間が長くなったのか、大きな声で泣いてばかりで、
若い女の医師と看護師が、芹南をおさえつけるようにして裸にしている。
「ママ、ママ」
もともと人見知りの娘、
見たことない医療関係者の真剣な顔に、かなりビビっていて、
ベッドの柵につかまり立ち、
私に手を差し出してきた。
「芹南……」
いつもの “ 抱っこ ” 要請のポーズだ。
「お母さん、今からバリウムを流し込んで、腸を正常位置に戻します。
お子さんを興奮させないために、申し訳ありませんが、外でお待ちいただけますか?」
その若い女の医師は、長い髪を後ろに束ねて 顔は、かなりきつめの人だった。
「わ、わかりました」
彼女の焦った早口が、
治療の難しさを物語っていて、
ガシャン!
と重い音をたてて閉まったドアが、
私の心臓にも、ドン!と、不安を上乗せしてきてきた。
「…………」
……シン……
時間外の病院の廊下……
そこに、処置室からの、娘の泣き叫ぶ声が響き渡り、
耳を塞ぎたくなった。
「ごめんごめんごめん……芹南……ゴメン」
もっと早く病院に来ていれば……
後悔と、罪悪感と、
そして、孤独感と____
「………………優…………」
携帯電話にたくさん残った着信履歴。
だけど、
頼るわけにはいかない。
この時ほど、
いろんなものを分かち合える家族が欲しいと、
思ったことはなかった。
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