第3話

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「ママ、ママ、て、痛い」 芹南は、手の甲から点滴の針を入れられて、そこに当てたガーゼが赤く滲み、 とても痛そうだ。 「ここから、ご飯が体に入っていくからね」 絶食だけど、水は少しなら与えて良かったので、 ぐずぐず言い出した時に、ちょっとだけ飲ませた。 「芹南、痛かったねー!」 実母が、色々買って病室を訪れる。 「あら、何も食べられないの?」 母は、芹南のために買ったマルボーロやゼリー、幼児用のジュースを残念そうに冷蔵庫に入れていた。 時計を見ると、夕方4時、 思えば、私も朝から何も食べていない。 「じゃあ、お母さん、ちょっと自宅にいくね、よろしくね!」 人見知りはしても、実母には なついているはずなのに、 「ママ、ママ!」 ベッドから乗り出して抱っこ要請ポーズを繰り返す。 きっと、別室での治療がよほど怖かったんだろう。 「芹南、ママはすぐ、戻ってくるよ」 母がなだめている間に病室を出る。 …………オモチャもいるな。絵本も。 私、しばらく風呂入れないし、 シャワーも浴びたいな。 何か口に入れたいし…… 一時間で戻ってこれるかな?
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