第3話-2

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試作品作りで、定時を迎えてしまって、 何となく申し訳なくて。 山岡工場長と、私の代わりに仕込み・焼きを手伝わせれている多良田さんに 帰りの挨拶をすると、 「楽しそうだったな」 「え」 「本当。まるで、恋人同士みたいだったなぁ」 二人にチクリと言われる。 「元々、新しいお菓子食べたりするの好きだったから………」 「へえ。遊んでるようにしか見えなかったな」 『こ、小娘っ』 二人はケーキスポンジを冷凍用の箱に詰める作業をしていた。 実は、ここに来て驚いたのが、 クリスマス用のケーキを秋の段階で作り、冷凍庫にストックしていることだった。 店頭に出す前に解凍するのだという、 まるで、大手パン屋さんの大量生産するクリスマスケーキみたいだ。 「山岡工場長、休憩してないでしょ? あとは、佐藤さんと私でやってしまうから、一服してきてください」 小娘は、 好きな山岡工場長に最高の笑顔で、可愛い事を言っている。 「おっ?そうか?佐藤お前、お迎えまでにさっさと切り上げて帰れよ」 「…………はい」 『残業か』 今の1人の私なら、いくら残業したって構わないわね。 私は、多良田さんのやることを見よう見まねで覚えて、箱詰め作業を開始する。 工場内は、 正社員の男性が1人、奥で和菓子の試作を作っているだけだった。 「いつまで頑張るつもり?」 黙々と作業していた多良田さんが、 やっと口を開いた。 「いつまでって?」 「目障りなんだけど」 カッチ______ン! こいつ、これが言いたくて、私と二人で作業したかったんだ?! 「私みたいなオバサン、気に止めずに仕事したらいいじゃない?」 だいたい、 大好きな山岡工場長と二人で仕事できたんだから、それはそれで、感謝くらいされてもいいのでは? 「あんたと正造さんが仲良くやって、それに対して山岡工場長が、ヤキモチ妬いているのが気に入らないんだよ」 この、18才、彼氏もち。 どこまで自己中なの?
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