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「娘、いなくなっちまったのか」
いきさつを話して、
病室に戻る私の後ろを歩く山岡さんは、
「俺が、お前をすぐ、正社員にしてもらえるように頼んでやるから」と、
向きを変えて玄関に早歩きしだした。
「あっ!待ってください!」
誰に頼むつもり?!社長?!
こんな ″ 役立たず ″を正社員にすることを雇われパティシエがお願いしたら、
社長が二人の仲を変に思ってしまう。
それに……
「私、転職も考えてるんです!」
あの、
女ったらしの正造のそばで働き続ける自信も、
失いかけていたから。
「転職?」
山岡工場長の顔が、
みるみる険しくなっていた。
「男にやられたくらいで、尻尾巻いて逃げるなんて、腐った男みたいなやつだな!?」
「私、女です」
このひと、
国語力、ない。
「お前みたいな半端な奴、どこ行ったって務まんねーよ!」
だけど、
グサリと、きた。
「正造に無理矢理やられた訳じゃないんだろ?お前の意思だろが
私情、職場に挟み込むんじゃねえ、一人の人間に一から教え込む上の立場、ちっとは考えやがれ」
グサリときたけど、
セクハラみたいな事した人に言われたくない…………とも思った私。
「転職も、まだ、決まってる訳じゃないので、頭ごなしに話すのヤメテもらえますか?」
こんなときに、
母親の病。
私の生活、
どれだけ甘くないのだろう?
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