第3話-2

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「娘、いなくなっちまったのか」 いきさつを話して、 病室に戻る私の後ろを歩く山岡さんは、 「俺が、お前をすぐ、正社員にしてもらえるように頼んでやるから」と、 向きを変えて玄関に早歩きしだした。 「あっ!待ってください!」 誰に頼むつもり?!社長?! こんな ″ 役立たず ″を正社員にすることを雇われパティシエがお願いしたら、 社長が二人の仲を変に思ってしまう。 それに…… 「私、転職も考えてるんです!」 あの、 女ったらしの正造のそばで働き続ける自信も、 失いかけていたから。 「転職?」 山岡工場長の顔が、 みるみる険しくなっていた。 「男にやられたくらいで、尻尾巻いて逃げるなんて、腐った男みたいなやつだな!?」 「私、女です」 このひと、 国語力、ない。 「お前みたいな半端な奴、どこ行ったって務まんねーよ!」 だけど、 グサリと、きた。 「正造に無理矢理やられた訳じゃないんだろ?お前の意思だろが 私情、職場に挟み込むんじゃねえ、一人の人間に一から教え込む上の立場、ちっとは考えやがれ」 グサリときたけど、 セクハラみたいな事した人に言われたくない…………とも思った私。 「転職も、まだ、決まってる訳じゃないので、頭ごなしに話すのヤメテもらえますか?」 こんなときに、 母親の病。 私の生活、 どれだけ甘くないのだろう?
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