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「恋愛は自由だって、確かに俺は言ったけどな」
なんだかんだと言いながら、
一度荷物取りと、食事も兼ねて病院から出ることにする。
一度出ると駐車料金がとられるため、
治療の終わった山岡工場長の車に乗せてもらった。
「はい、『正造も、きっと面食いだからお前もイケる』みたいな事言ってましたよね」
「そんなこと言ったか俺?」
女は顔が大事、みたいな事言う上司ってどうよ?
って思ったんだから、覚えてるぞ。
「まぁ、大事なのは結果だよ、
社内恋愛したら別れた時の事覚悟しなきゃダメだ。まわりの迷惑考えろ」
″ 社内恋愛 ″ ……
したうちに入るのだろうか?
一度、
( いや一日に三回) エッチしただけの仲だよ?
「ここ?実家?」「はい」
入院した母の荷物を取りに先に団地アパートに送ってもらう。
「ちょっと、待っててください」
「…………お前、苦労したんだな。
付いていくよ、荷物沢山あるんじゃねーの?」
「………………」
ぼろぼろの公営団地住まいだと、
やっぱ、貧乏だって思っちゃうのかな?
『実家は貧乏な母子家庭』
またまた、優の嫌な言葉を思い出した。
「ほんと、ここで待っててくださいね!」
玄関入り口で
ドアを閉めて山岡さんを待たせる。
実家とはいえ、
母の家。
職場の人間を勝手に入れるわけにはいかない。
「佐藤ー、念のため、靴と化粧道具も荷物に入れといてやったほうがいいぞ。
救急搬送されたとき、履いてなかったなら!」
ドアの向こうから、工場長の声が響いてくる。
「確かに! だけど 化粧品はいらないんじゃないなぁ」
うちの母親は、昔からほとんどメイクはしない女性だった。
「でも、女って、元気になったら、誰かと会うとき綺麗でいたいもんだろ?
かぁちゃんだって同じだろう」
………………そっか。
山岡工場長の言葉に妙に納得。
「だてに長く生きてるんじゃないんだね」
独り言のつもりで口に出したのに、
玄関にいる山岡工場長に、ばっちり聞こえていたみたい。
「人を年寄りみたいなに言うんじゃねぇ」
それでも叱られることはなくて、
「荷物貸せ、車まで運ぶから」
「ありがとうございます,」
今日は、全体的に、山岡さんに頼ってばかりの一日だ。
「少しは腹減ってきたか?」
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