第3話-2

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「恋愛は自由だって、確かに俺は言ったけどな」 なんだかんだと言いながら、 一度荷物取りと、食事も兼ねて病院から出ることにする。 一度出ると駐車料金がとられるため、 治療の終わった山岡工場長の車に乗せてもらった。 「はい、『正造も、きっと面食いだからお前もイケる』みたいな事言ってましたよね」 「そんなこと言ったか俺?」 女は顔が大事、みたいな事言う上司ってどうよ? って思ったんだから、覚えてるぞ。 「まぁ、大事なのは結果だよ、 社内恋愛したら別れた時の事覚悟しなきゃダメだ。まわりの迷惑考えろ」 ″ 社内恋愛 ″ …… したうちに入るのだろうか? 一度、 ( いや一日に三回) エッチしただけの仲だよ? 「ここ?実家?」「はい」 入院した母の荷物を取りに先に団地アパートに送ってもらう。 「ちょっと、待っててください」 「…………お前、苦労したんだな。 付いていくよ、荷物沢山あるんじゃねーの?」 「………………」 ぼろぼろの公営団地住まいだと、 やっぱ、貧乏だって思っちゃうのかな? 『実家は貧乏な母子家庭』 またまた、優の嫌な言葉を思い出した。 「ほんと、ここで待っててくださいね!」 玄関入り口で ドアを閉めて山岡さんを待たせる。 実家とはいえ、 母の家。 職場の人間を勝手に入れるわけにはいかない。 「佐藤ー、念のため、靴と化粧道具も荷物に入れといてやったほうがいいぞ。 救急搬送されたとき、履いてなかったなら!」 ドアの向こうから、工場長の声が響いてくる。 「確かに! だけど 化粧品はいらないんじゃないなぁ」 うちの母親は、昔からほとんどメイクはしない女性だった。 「でも、女って、元気になったら、誰かと会うとき綺麗でいたいもんだろ? かぁちゃんだって同じだろう」 ………………そっか。 山岡工場長の言葉に妙に納得。 「だてに長く生きてるんじゃないんだね」 独り言のつもりで口に出したのに、 玄関にいる山岡工場長に、ばっちり聞こえていたみたい。 「人を年寄りみたいなに言うんじゃねぇ」 それでも叱られることはなくて、 「荷物貸せ、車まで運ぶから」 「ありがとうございます,」 今日は、全体的に、山岡さんに頼ってばかりの一日だ。 「少しは腹減ってきたか?」
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