第3話-2

36/40
前へ
/40ページ
次へ
「え、あー……そうですね」 朝からコーヒーしか口にしていない。 「母ちゃん心配だろうから、病院側のファミレスにしとこう」 「はい……」 実は、ファミレスに一人で入ったことはない。 芹南と二人でも、何となく入りづらかったから、離婚してからは利用したことなかった。 「ほんとは、M町の【フェローセヲ】ってパスタ屋に行きたかったんだけどな」 店の喫煙席側のつもりで窓際に座る。 「以前も、パスタ誘ってくれましたね」 「おう。そこ、すぐそばにラブホがあるからな。若いねぇちゃんとデートするときには持ってこいの場所なんだよ」 「………………やっぱり」 地元では、カップル定番のコースだから知っていた。 「お前が、正造にひどい目に合うのは本望じゃないけど、 それで、俺んとこに転がり込んでくるのも有りだな」 「ありません」 相変わらずの、遊び人発言連発の上司。 「お待たせしましたー、焼き魚定食のお客様は?」 「あ、はい。」 おかげで、変に意識せずに食事だけに集中できるランチとなった。 そんな私を、 工場長は、笑いながら見ている。 「…………な、なんですか?」 「飯をバクバク食べる女は、好きだな」 「!」 ……なのに、 そんなことを言うから 「ワハハー急にしおらしくなるんじゃねぇよ!」 再び、 自分は、まだ女なんだなって思ってしまった。 バツイチで、 子供まで取られた情けない女。 こんな私を、 心から好きになってくれる人はいるのかな? ………………( 独身者に限る )
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加