第3話-2

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「えっ」 朝、工場に入るなり 後ろから正造に話しかけられる。 「山岡工場長とドライブデートしてただろ?」 見られてたんだ。 どこですれ違ったんだろ? 「ドライブって、 病院で偶々会って、ご飯食べただけよ」 だいたい、なんで、そんなこと正造に説明しなきゃいけないのよ? 「飯ねぇ、下心ありありのオッサンと、お前、軽すぎるだろ?」 正造は自分を棚に上げて、偉そうに タイムカードを押す私の手をつかんだ。 「下心より悪質なのは、 口達者な非避妊主義者だと思うけど」 ______言い過ぎ。 わかってるのに、 止まらなかった。 「ホントに、お前、下品な女だな? もういいよ」 掴まれていた腕を放される。 ″ もういいよ ″ 「………………」 なによ、 それは、こっちの台詞だよ。 コックコートの正造の後ろ姿は、 とても、細く見えた。 一度、失った信用は、なかなか戻らない。 バツイチだからこそ、 そこは敏感なんだよ。
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