第3話-2

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「そう、お子さん、今いないんだ」 パートの古賀島さんが、お昼休みに話を聞いてくれた。 「悩んでます。 経済力をつけるために、自分に一体何ができるのか」 根本的に、 果たして、私が芹南を引き取ったとして、幸せにできるのか。 「私は、娘も息子もいるけど、 娘ってね、顔は父親に似てしまっても、 体質とか、性質とかね、 遺伝子的なものは、母親の方を引き継いでしまうみたいなのよ」 古賀島さんは、お弁当の後に、この店の商品を買って食べるのが習慣のようだ。 今日は、 クレームブリュレ。 「やっぱり、似てしまうと、可愛いですよね」 私は、実母に顔も性格も似てしまって、 とても不器用。 芹南は、私の人見知りを引き継いでしまっている。 「そう、欠点じゃないかなと思うところも、自分の分身みたいで憎めない」 古賀島さんは、SweetSを食べて、とても満足そうだ。 「この苦いところも美味しいのよね」 「私も買おうかな」 「…………母親は子供って、手放しちゃいけないと思うよ 必ず、生んでよかったって思う時がくるから」 古賀島さんは、空容器を水道で軽くすすいでから、ゴミ箱にいれる。 とても常識あるパートさんだ。 「他人の欠点も、 可愛いと思えたらいいのにね」 「えっ?」 初めて話した時から、感じていた。 「元旦那さんにしても、新しい恋人にしても、必ず欠点はあるものよ」 まるで お母さんのようなパートさんなんだ。 「今日、私、三者面談だから早退なの。じゃあね」 「お疲れさまでしたー」 休憩室を、笑顔で出ていく古賀島さんを見て、 ″ あんな、お母さんになれたらな ″ って、心からそう思った。 「佐藤!」 もう少しで食べ終わる私を呼ぶ声。 休憩室のみんなは、声の主を見る。 なんと、 社長の中野元だった。 わたし、 なにした?
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