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「そう、お子さん、今いないんだ」
パートの古賀島さんが、お昼休みに話を聞いてくれた。
「悩んでます。
経済力をつけるために、自分に一体何ができるのか」
根本的に、
果たして、私が芹南を引き取ったとして、幸せにできるのか。
「私は、娘も息子もいるけど、
娘ってね、顔は父親に似てしまっても、
体質とか、性質とかね、
遺伝子的なものは、母親の方を引き継いでしまうみたいなのよ」
古賀島さんは、お弁当の後に、この店の商品を買って食べるのが習慣のようだ。
今日は、
クレームブリュレ。
「やっぱり、似てしまうと、可愛いですよね」
私は、実母に顔も性格も似てしまって、
とても不器用。
芹南は、私の人見知りを引き継いでしまっている。
「そう、欠点じゃないかなと思うところも、自分の分身みたいで憎めない」
古賀島さんは、SweetSを食べて、とても満足そうだ。
「この苦いところも美味しいのよね」
「私も買おうかな」
「…………母親は子供って、手放しちゃいけないと思うよ
必ず、生んでよかったって思う時がくるから」
古賀島さんは、空容器を水道で軽くすすいでから、ゴミ箱にいれる。
とても常識あるパートさんだ。
「他人の欠点も、
可愛いと思えたらいいのにね」
「えっ?」
初めて話した時から、感じていた。
「元旦那さんにしても、新しい恋人にしても、必ず欠点はあるものよ」
まるで
お母さんのようなパートさんなんだ。
「今日、私、三者面談だから早退なの。じゃあね」
「お疲れさまでしたー」
休憩室を、笑顔で出ていく古賀島さんを見て、
″ あんな、お母さんになれたらな ″
って、心からそう思った。
「佐藤!」
もう少しで食べ終わる私を呼ぶ声。
休憩室のみんなは、声の主を見る。
なんと、
社長の中野元だった。
わたし、
なにした?
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