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「えっ?」
私の髪の毛じゃない?
工場長の背中を追いながら、
そのゴムでまとめた後れ毛に疑いをかける。
「工場長、抜け毛、やばいんじゃないですか?!」
「うるせぇ!」
焼却炉にそのマドレーヌを投げ入れると、消えかけていた炎が、また勢いよく燃えだした。
「俺と、お前の髪の毛ではないんだよ」
その炎を見つめる工場長。
社長と同じように、ため息が後をたたない。
「じゃ、誰の?」
「そこは、今はハッキリ言えないけど、仕込みの段階で髪の毛が入れば、
俺の目は節穴じゃない、絶対に気づくはずなんだ」
「…………生地を寝かせている間に?」
「それでも、型に流すときに気づかないはずがない」
「……………………」
じゃ、いつ入ったというの?
「いくつか考えられるけど、とりあえず俺は今から客先に頭下げに行くから」
「え、じゃ、私もっ」
疑いは、私に向けられている。
「いい、お前はくるな」
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