第3話-2-2

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『あと、しなきゃいけないのは、タルト生地の20台分、クリスマスデコ台ストック マドレーヌ……』 指示は、壁に貼ってあるオーダー表のみ。 レシピは、自分の記したメモ帳。 『このレシピ、正確だろうか?』 ゴクッ。 唾とともに、不安も飲み飲む。 今日は、間違いを指摘してくれる人がいない。だから、間違えるわけにはいかない。 私は、冷蔵室からバターと卵を取り出して、バターを室温に戻すことから始める。 「佐藤さん、1人で大丈夫?」 飾り付けのパートさんたちが心配そうに見ている。 「分かりません」 1人でやるのは初めてだ。 「正造さんに手伝ってもらったら?」 「出来るところまで1人でやります」 ″ 不器用が偉そうに ″ 、と 思う人もいるかもしれないけれど、 不器用なりに、集中したら実力以上の結果が出たりすることもある。 『バターに砂糖を入れて、卵を割って卵黄を入れて混ぜる』 そして、 ふるった粉をいれなければ。 「粉ふるい、変わろうか?」
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